- 2008-11-21 Fri 01:52:58
- 元ブーツ屋として
ブーツ自体がどのような機能を持っているかを今まで書き連ねましたが、シチュエーションによってどんな機能が優先されるのでしょうか。
・モトクロス
大きな衝撃が加わるために保護機能を最優先
操作性もその中で最大限に確保する必要がある
・エンデューロ
モトクロスに比べると長時間ライディングするのでそれに合わせた快適性が必要
バイクを押すようなレースではソールのグリップも重要になる
・ツーリング
一日中履くために快適性が最優先
シッティングでのペダル操作が楽に出来るように柔らかめの構造
歩くことも多いためにソールのフレックスも必要
・トライアル
操作性を最優先
ソールのグリップも重要な機能
・バイクトレッキング
速度も低くツーリングなどに近い
トライアルに近い操作性を要求されるがプロテクションも相応に必要とされる
ではもう少し詳しくお話ししましょう。
まず最初にお断りしますが、ここでは廉価バージョンやそれに相応するメーカーのブーツについては除外しております。
全世界で流通しているオフロード用ブーツの多くはヨーロッパと中国で生産されています。以前はイタリアがほとんどでしたが、メイドインイタリーでも東欧諸国で製造過程のほとんどを行うようになりました。また技術的に多少向上したためか中国製品も増えてきました。
ただ向上したと言ってもまだトップモデルを製造するにはお粗末な状況なので注意が必要です。
ヨーロッパは革の品質と加工技術が確立していますが、アジアではその部分に不安定な要素があるために品質にばらつきがあったり満足いくレベルにならなかったりするためです。
それを踏まえて廉価バージョンはここではあまり触れない事にします。
■モトクロス用
基本的に全世界で生産されているオフロードブーツのほとんどはこのカテゴリーでの使用を前提に製作されています。ですから条件として挙げた用件はほとんど満たしていると言って良いでしょう。
しかし操作性とプロテクションという相反する用件を高度にバランスさせるために様々なギミックが盛り込まれており、そこに各メーカーの技術力や考え方が反映されています。
基本的にどのメーカーもトップモデルは色々盛り込んでおりあまり“外れ”はありませんが、ヘビーユーザーの場合はセカンドモデル以降の購入は慎重になった方が良いでしょう。
ただガエルネのSG-10とFASTBACK、アルパインスターズのTECH10とTECH8のような場合は日本人の筋力ではセカンドモデル(他メーカーだったらトップモデル並ですが)が良い場合もあります。コースのシチュエーションやライダーの体格の違いなどから、トップモデルの要求用件が日本人には高すぎるからです。
・選び方
足にぴったり合ったブーツにしないと足が遊んで危険です。装着時間が短い事もあってこれを嫌うために鬱血するくらいぴったりしたブーツを履くライダーもいます。
そうなると気を付けないといけないのがブーツの足形です。
一般に日本人は甲高と言われますが、年齢によっても変わってきますので基本的には一度試された方が良いでしょう。あまり選ぶ機会が無い場合はメーカーによる傾向から判断してください。
例えばアルパインスターズやFOXなどは比較的アメリカ型の細身の足形をしており、サイズも1サイズ大きめを選ぶ人が多いようです。逆にガエルネやSIDIはゆったり目の形状で普段のスニーカーなどと同じサイズの場合が多くなっています。
ただ、このクラスのブーツは足への負荷も大きいためにそれを補助するソックスやインナーソールの使用も考えた方が良いでしょう。その場合は上記よりも1サイズ大きめにして厚手のソックスやインナーソールを併用することでぴったりするように調整すると良いでしょう。
またブーツ上部がすねを支える構造になっているためにふくらはぎのフィット感も重要です。特にニーブレースをする場合は調整範囲の狭いブーツだと装着自体が出来ない場合もあるから気を付けなければなりません。
しかし最近のブーツは樹脂が多くなってスターウォーズに出てくるトルーパーのようになっていますね。これは本体を合成皮革(シンセティックレザー)にして樹脂パーツでそれを補強するようにしているためです。そうすることで基本的な構造は柔らかく操作性を高めてくれて、動作の制限やプロテクションの最適化を樹脂パーツの配置で調整出来るからです。
樹脂も単純に本体に縫いつける形から相互の仕事に専念出来るようピボットで結ばれていたり、一部分だけを縫いつけてあとはフリーにする方法などが採られています。
足首の部分はつま先を上げる方向にはある程度抵抗が欲しくて(理由はわかりますよね)伸ばす方向にはフリーにしたいというワンウェイの作動制限が理想とされます。これらの構造でこの機能を具現化しようとしているのです。
そのうちバイクのサスペンションと同じようにダンパー付きのブーツが出ても不思議じゃありません。
それくらい過酷な状況で使用されるアイテムなのです。
■では何を選ぶ?
一番最初に挙げたとおりどのメーカーでもトップモデルからセカンドモデルでしたら問題なく使用できます。装着時間も短いのでブーツの重量もあまり問題になりません。それよりもサイズをぴったりにするために調整するアイテムに気を配ってください。これを充実させることでブーツの性能を充分に発揮させることが出来ます。
すみません。なんか“何でも良いよ”みたいな書き方になってしまいました。でもそれくらい老舗メーカーは切磋琢磨して高品位なブーツをリリースしているのです。ことモトクロス用として考えるなら価格と品質は比例していると考えていただいて良いと思います。あとは財布の許容範囲とデザインで選んでも大丈夫です。
<つづく>
次はエンデューロ用に求められる用件と選び方です。
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